無理なくできる家計管理:複数の銀行口座を賢く使い分けるステップ
家計の管理を始めたいけれど、どこから手をつければ良いか分からない。給与が入ってくる口座も、生活費を払う口座も、貯蓄したいお金も全部同じ口座にあるから、今月あといくら使って良いのか把握できない。気づいたら貯めるはずのお金が減ってしまっている。そのようなお悩みをお持ちの方は少なくないかもしれません。
お金の流れが複雑だと、家計全体を把握しにくくなり、「貯まる体質」を作るのが難しくなります。しかし、ご安心ください。家計管理は、一歩ずつ、無理のない方法で進めることができます。この記事では、複数の銀行口座を賢く使い分けることで、お金の流れをシンプルにし、「貯まる体質」を無理なく作るための具体的なステップをご紹介します。
「貯まる体質」とは何か
私たちが目指す「貯まる体質」とは、単に支出を極端に減らすことだけを指すのではありません。それは、収入と支出をしっかりと把握し、コントロールできるようになり、将来の目標に向けて計画的にお金を管理できる状態のことです。この状態を作るためには、まず自分のお金が「どこから来て」「どこへ行くのか」を明確に「見える化」することが非常に重要になります。そして、複数の銀行口座を目的別に使い分けることは、この「見える化」を簡単かつ継続的に行うための非常に有効な手段の一つなのです。
なぜ複数の銀行口座を使い分けるのか
なぜ一つの口座ですべてを管理するのではなく、複数の口座を使うことが推奨されるのでしょうか。その主な理由は以下の通りです。
- お金の流れの「見える化」が容易になる: 用途別に口座を分けることで、それぞれの口座を見れば「これは生活費」「これは貯蓄」とすぐに判断できます。これにより、何にいくら使えるかが明確になり、使いすぎを防ぐ意識が高まります。
- 予算管理がしやすくなる: 例えば、生活費用の口座に毎月予算額だけを入れるようにすれば、その口座の残高を見れば予算内でやりくりできているかどうかが一目で分かります。
- 貯蓄が確実にできるようになる: 貯蓄用口座に一度移したお金は、「特別な目的がない限り引き出さない」というルールを作ることで、貯蓄が着実に積み上がっていきます。一つの口座にすべてがあると、貯蓄分も生活費の延長で使ってしまいがちです。
- 目的に応じた口座の活用: 各銀行が提供するサービス(ATM手数料無料回数、金利、振込手数料など)は異なります。用途に合わせて最適な銀行口座を選ぶことで、間接的に家計にプラスになることもあります。
複数の銀行口座を賢く使い分けるステップ
では、具体的にどのように複数の銀行口座を使い分けていけば良いのでしょうか。無理なく続けられるステップで進めていきましょう。
ステップ1:まずは現状を把握する
現在、ご自身が持っている銀行口座を全てリストアップしてください。そして、それぞれの口座が現在どのような目的で使われているか(給与の受取、公共料金の引き落とし、貯蓄など)を確認しましょう。使っていない口座があれば、この機会に解約を検討するのも良いかもしれません。現状を整理することで、次にどのような口座が必要かが明確になります。
ステップ2:目的別に口座を分けるルールを決める
次に、お金の管理をシンプルにするために、口座を目的別に分けるルールを決めます。家計管理の基本となるのは、以下の3つの目的で口座を分けることです。
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口座A:給与受取・固定費引き落とし用
- 毎月の給与が振り込まれるメイン口座とします。
- 家賃や住宅ローン、光熱費、通信費、保険料など、毎月一定額かかる固定費の引き落としに利用します。
- この口座には、給与から必要な金額を他の口座に移した残りが残る、という考え方でも良いですし、固定費引き落としに使う分だけを残す、という考え方でも構いません。ご自身の管理しやすい方法を選びましょう。
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口座B:生活費支払い用(変動費)
- 食費、日用品、交通費、娯楽費など、毎月変動する生活費の支払いに使う口座です。
- この口座には、毎月決まった金額だけを入金し、その範囲内でやりくりすることを目指します。この口座のお金だけを使えば良い、と割り切ることで、予算管理が非常に簡単になります。キャッシュレス決済をよく利用する方は、キャッシュレス決済へのチャージ元口座としても便利です。
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口座C:貯蓄用
- 将来の目標(緊急予備資金、旅行資金、教育資金など)のために貯めるお金を入れておく口座です。
- 原則として、この口座からお金を引き出すのは貯蓄の目的が達成される時のみ、というルールを強く意識することが重要です。
初めて口座を分ける方にとっては、まずはこの3つに分けることから始めるのがおすすめです。慣れてきたら、特別費(自動車税、旅行費用など年数回発生する支出)のための口座や、長期目標(住宅購入資金など)のための口座などを追加で設けることも検討できます。
ステップ3:お金の移動ルールを決め、自動化を検討する
目的別の口座分けルールを決めたら、次はお金がどのように口座間を移動するか、具体的なルールを決めます。例えば、
- 「給料日に、口座Aから口座B(生活費)へ〇円、口座Aから口座C(貯蓄)へ〇円を移す」
といったルールです。このお金の移動を自動化することをおすすめします。多くの銀行には、毎月決まった日に決まった金額を別の口座へ自動で振り込む「自動送金サービス」があります。これを利用すれば、手作業で移し替える手間が省け、「貯蓄に回す分をうっかり使い込んでしまった」という事態も防げます。給与が振り込まれたら、まず貯蓄分を別の口座へ移す「先取り貯蓄」が無理なく貯めるための効果的な方法です。
ステップ4:各口座の使い方ルールを守る
口座を分けただけでは効果は限定的です。それぞれの口座を、ステップ2で決めた目的に沿って使うことが重要です。
- 生活費支払い用口座のお金は、決められた生活費以外に使わない。
- 貯蓄用口座のお金は、原則として引き出さない。
といったシンプルなルールを守ることを意識してください。初めは意識が必要かもしれませんが、慣れてくれば自然とできるようになります。
ステップ5:定期的に見直しを行う
家計の状況は常に変化します。生活スタイルが変わったり、収入や支出に変動があったりするかもしれません。そのため、設定した口座の使い方やお金の移動ルールが現状に合っているかを、数ヶ月に一度など定期的に見直すことが大切です。無理が生じていないか、もっと効率化できる部分はないかなどを確認し、必要に応じてルールを調整しましょう。この見直しも、無理なく家計管理を続けるための重要なステップです。
まとめ
複数の銀行口座を目的別に賢く使い分けることは、複雑になりがちな家計のお金の流れをシンプルにし、「見える化」を促進するための効果的な方法です。
この記事でご紹介したステップは以下の通りです。
- 現状の口座と使い方を把握する
- 給与受取・固定費、生活費、貯蓄など、目的別に口座を分けるルールを決める
- お金の移動ルールを決め、自動送金などを活用し自動化する
- 決めた口座の使い方ルールを守る
- 定期的に見直しを行う
これらのステップを一つずつ実行することで、お金が「今、どこに、どれだけあるのか」が明確になり、家計をコントロールしているという実感を持つことができるようになります。最初は少し手間に感じるかもしれませんが、一度仕組みを作ってしまえば、あとは無理なく継続できるようになります。
家計管理は、将来の漠然とした不安を減らし、お金に対する安心感を得るための大切な一歩です。複数の銀行口座の使い分けは、そのための強力なツールとなるでしょう。「貯まる体質」は一日では作れませんが、今日から小さな一歩を踏み出すことで、着実に目指す姿に近づいていけます。ぜひ、ご自身のペースでこのステップを試してみてください。