無理なく続けられる家計改善:支出を分類したら?効果的な見直し箇所の選び方
家計管理の第一歩として、ご自身の支出を把握し、分類する作業に取り組んでこられた方もいらっしゃるかと思います。食費、水道光熱費、通信費、娯楽費など、項目ごとに整理された支出データを見ていると、「こんなに使っていたのか」と気づきがある一方で、「この次に、どこから手をつけたら良いのだろう」と立ち止まってしまうこともあるかもしれません。せっかく家計改善を始めたのに、ここでどうすれば良いか分からなくなってしまうのはもったいないことです。
本記事では、支出を分類した後のステップとして、より効果的に家計を改善するための「見直し箇所の選び方」、つまり優先順位のつけ方について、無理なく続けられる視点から具体的な考え方をご紹介します。
「貯まる体質」とは何か
まず、「貯まる体質」について改めてご説明します。これは単に「節約する」ことだけを指すのではありません。ご自身の収入と支出の流れを正確に把握・コントロールし、将来に向けた資金計画を立て、実行できる状態をいいます。支出を見える化し、分類することは、この「貯まる体質」を作るための非常に重要な土台です。この土台の上に、次にどのような行動をとるべきかを見極めることが、無理なく家計改善を進める鍵となります。
支出分類の次に何を見直す?基本的な考え方
支出を分類したデータは、ご自身の「お金の使い方のクセ」や「無駄が発生しやすい項目」を教えてくれる貴重な情報源です。この情報を最大限に活用するために、次にどこを見直すべきか、効果的な箇所の選び方を考えていきましょう。
家計改善のステップとして、まず全ての支出項目をいきなり見直そうとする必要はありません。それでは負担が大きくなり、長続きしない可能性があります。大切なのは、優先順位をつけて、インパクトが大きいものや、取り組みやすいものから着手することです。
ステップ1:支出を「固定費」と「変動費」に大別する
分類した支出項目を、さらに大きく「固定費」と「変動費」に分けてみましょう。
- 固定費: 毎月、あるいは定期的にほぼ一定額が発生する支出です。一度見直しをすれば、その後は自動的に効果が継続しやすいのが特徴です。例:家賃、住宅ローン、通信費(スマホ、インターネット)、保険料、サブスクリプションサービス(動画、音楽、アプリなど)、車のローン・維持費の一部など。
- 変動費: 毎月金額が変動する支出です。日々の意識や工夫が直接的に影響します。例:食費、水道光熱費、交通費、日用品費、娯楽費、交際費、被服費など。
この2つに分けることで、家計全体の構造が見えやすくなります。
ステップ2:固定費から見直しを検討する
家計改善において、まず見直しを検討すべきは「固定費」です。その理由は、以下の2点です。
- 効果が大きいことが多い: 固定費は毎月一定額が発生するため、少しの削減でも年間で見ると大きな金額になります。例えば、毎月3,000円の通信費を削減できれば、年間では36,000円の貯蓄につながります。
- 一度やれば効果が継続する: 変動費のように毎日の意識が必要なものと違い、固定費の見直しは一度手続きをすれば、その後は自動的にその削減効果が得られます。これにより、無理なく「貯まる体質」を維持しやすくなります。
具体的な固定費の見直し例:
- 通信費: 契約プランの見直し、格安SIMへの乗り換え、不要なオプション解約など。
- 保険料: 現在加入している保険の内容を確認し、保障内容が重複していないか、現在のライフスタイルに合っているかなどを検討する。不要な特約の解約など。
- サブスクリプションサービス: 利用していない、あるいは利用頻度が低いサービスはないか確認し、解約する。無料トライアル期間が過ぎたものをそのままにしていないかチェックする。
- 電気・ガス料金: 料金プランの見直しや、電力会社・ガス会社の切り替えを検討する。
これらの項目は、少し手間がかかる場合もありますが、得られる効果が大きいことが多いため、優先的に取り組む価値があります。
ステップ3:変動費の管理と効率的な見直し
固定費の見直しと並行して、または固定費の見直しにある程度目途がついたら、変動費の管理と見直しに取り組みます。変動費は日々の行動と密接に関わっているため、管理には意識が必要です。
変動費の見直しにおいては、以下の視点を持つことが効果的です。
- 金額の大きい項目から: 変動費の中でも、特に金額が大きい項目(例:食費、水道光熱費)から見直すと、改善の効果を感じやすい場合があります。
- 「なくても困らない」無駄がないか: 衝動買いが多い項目、漠然と使ってしまっている項目(例:コンビニでの少額な買い物、頻繁な外食・デリバリー)などがないか、分類した支出データから探します。
- 少しの工夫で減らせるもの: 例えば、水道光熱費であれば節水や節電を意識する、食費であれば週に一度まとめて買い物をする、使い切りを意識するなど、日々の小さな工夫で改善できる項目から取り組むことも有効です。
変動費の見直しは、固定費のように劇的な効果がすぐには現れにくい場合もありますが、継続的な意識によって確実に効果を積み重ねることができます。また、日々の行動を見直すことは、「貯まる体質」を日常生活に根付かせる上で非常に重要です。
ステップ4:無理なく続けるための優先順位付けのポイント
効果的な見直し箇所を選ぶ上で最も重要なのは、「無理なく続けられるかどうか」という視点です。
- 負担の少ないものから始める: 例えば、いきなり食費を半額にしようとするのではなく、まずは利用していないサブスクを解約するなど、心理的・物理的な負担が少ないものから始めるのがおすすめです。
- 「好きなこと」や「大切なこと」は無理に削らない: 過度な我慢は家計管理を辛いものにしてしまいます。趣味や大切な人との時間に関する支出など、ご自身にとって譲れない項目については、無理に削る必要はありません。まずは、優先順位の低い「無駄」から見つけて見直すことが、家計改善を継続する秘訣です。
- 一度に全てをやろうとしない: 「今月は通信費の見直し」「来月はサブスクの整理」のように、毎月一つか二つ、テーマを決めて取り組むのが効果的です。
このように、支出の分類結果を「固定費」と「変動費」に分け、さらに「金額の大きさ」「無駄の有無」「取り組みやすさ」「継続の負担」といった様々な視点から優先順位をつけていくことで、次に何をするべきかが明確になります。
結論:行動は次の「貯まる体質」へつながる
支出を見える化し、分類したことは、家計改善の大きな一歩です。次に、このデータをもとにどこから見直しを始めるか、優先順位をつけて具体的な行動に移すことが、「貯まる体質」を本格的に作り始める段階といえます。
固定費から手をつけることで大きな効果を狙い、変動費で日々の意識を変えていく。そして何よりも、「無理なく続けられる範囲」で、ご自身にとって負担の少ない箇所からステップを踏むことが成功の鍵です。一つずつ着実に見直しを進め、その効果を実感することで、家計管理は決して辛いものではなく、将来への安心感や希望につながる前向きな習慣へと変わっていきます。
分類した支出データは、あなたが次に取るべき行動を指し示しています。焦らず、ご自身のペースで、一つずつ「貯まる体質」を作るステップを進めていきましょう。