無理なく家計を変える第一歩:固定費を見直すべき理由と具体的なステップ
家計の管理を始めたいけれど、何から手を付けていいか分からない、あるいは節約というと日々の我慢ばかりで辛そう、と感じている方もいらっしゃるかもしれません。毎日の細かな支出を記録したり、食費を切り詰めたりするのは大変そうで、なかなか最初の一歩が踏み出せないというお悩みはよく伺います。
しかし、家計改善には、無理なく始められて、かつ大きな効果が期待できる取り組みがあります。それが「固定費の見直し」です。今回は、なぜ家計改善の最初のステップとして固定費を見直すべきなのか、そして具体的にどのように進めれば良いのかを、段階を追ってご説明します。
「貯まる体質」とは単なる節約ではない
まず、このサイトで目指す「貯まる体質」とは何かについて改めて触れておきます。「貯まる体質」とは、単に支出を極端に減らすことではありません。ご自身の収入と支出の流れを正確に把握し、コントロールできる状態、そして将来の目標に向けて計画的にお金を管理できる状態を指します。この体質を作るためには、感情的な衝動買いを抑えるといった日々の努力ももちろん大切ですが、それよりも構造的に支出を減らす、あるいは収入を増やす仕組みを作ることが効果的です。
なぜ、家計改善はまず「固定費」の見直しから始めるべきなのか
家計の支出は大きく「固定費」と「変動費」に分けられます。 * 固定費: 毎月または年間で、ほぼ決まった額がかかる支出です。例えば、住居費(家賃や住宅ローン)、通信費、保険料、車の維持費、サブスクリプションサービス利用料などです。 * 変動費: 月によって金額が変わる支出です。例えば、食費、水道光熱費(使用量による変動分)、交通費、娯楽費、被服費などです。
家計改善を始めるにあたり、なぜまず固定費から着手するのが有効なのでしょうか。これにはいくつかの理由があります。
理由1:一度見直せば効果が継続する
固定費は、一度契約内容や利用状況を見直して支出を削減できれば、その効果が毎月、あるいは毎年にわたって継続します。例えば、スマートフォンの通信プランを見直して月々3,000円安くなれば、年間で36,000円の節約になります。これは、日々の食費を毎日100円ずつ節約するよりも、はるかに労力が少なく、継続的な効果が大きいと言えます。
理由2:日々の我慢が少ない
変動費の節約、例えば食費を切り詰める、外食を控えるといった取り組みは、日々の生活の中で意識し続け、ある程度の我慢が必要になる場合があります。しかし、固定費の見直しは、多くの場合、契約変更やサービスの解約といった一度きりの手続きで完了します。その後の日々の生活で何かを我慢する必要はほとんどありません。これが、「無理なく続けられる」という点につながります。
理由3:比較的、管理・把握しやすい
固定費は金額や支払日が決まっているものが多く、家計簿アプリやクレジットカード明細、銀行口座の引き落とし履歴などを確認すれば、比較的簡単に洗い出すことができます。何にいくら払っているかが見えやすいのが特徴です。
固定費を見直す具体的なステップ
では、実際に固定費を見直すための具体的なステップを見ていきましょう。
ステップ1:現在の固定費を全て洗い出す
まずは、ご自身の固定費にどのようなものがあるかを全てリストアップします。 * 家賃または住宅ローン返済 * 駐車場代 * 通信費(スマートフォン、自宅インターネット、固定電話など) * 水道光熱費(定額部分や基本料金、あるいは年間平均で把握) * 保険料(生命保険、医療保険、自動車保険、火災保険など) * サブスクリプションサービス(動画配信、音楽、アプリ、オンラインストレージなど) * 新聞購読料 * 車のローン返済や維持費(税金、保険) * 各種会費(スポーツジム、習い事など)
過去の銀行口座の引き落とし履歴やクレジットカードの明細、契約書などを確認しながら、漏れがないように洗い出してみてください。
ステップ2:各項目について「本当に必要か」「もっと安くできないか」検討する
リストアップした固定費について、一つずつ検討します。
- 必要性: そのサービスや契約は本当に必要でしょうか。利用頻度はどのくらいでしょうか。例えば、契約しているサブスクリプションサービスは全て活用できていますか?
- 適正価格: 同じようなサービスでもっと安いものはありませんか?例えば、スマートフォンの契約プランは見直す余地がないでしょうか。格安SIMへの乗り換えや、現在のキャリアでの新プランへの変更を検討できます。保険も、現在のライフステージに合った保障内容か、より安価な保険料の選択肢はないか確認できます。
- 利用状況: 契約内容が実際の利用状況に合っているか確認します。例えば、インターネット回線の速度はオーバースペックではないか、電気やガスの契約プランは家庭の使用状況に最適かなどです。
この段階では、すぐに解約や変更を決める必要はありません。まずは「見える化」した固定費に対して疑問を持ち、見直しの可能性を探ることが重要です。
ステップ3:具体的な行動計画を立てる
見直しの余地が見つかった項目について、具体的な行動計画を立てます。
- 例1:スマートフォンの通信費が高い
- 現状のプランと利用状況を確認する。
- 他社の格安SIMや、現在のキャリアの新しいプランについて情報収集する(ウェブサイト、比較サイトなどを利用)。
- 比較検討し、最適なプランを決定する。
- 乗り換えやプラン変更の手続き方法を確認する。
- 例2:不要なサブスクリプションサービスがある
- どのサービスを解約するか決める。
- 解約方法を確認する(ウェブサイト、アプリなど)。
- いつまでに手続きを行うか期日を決める。
行動計画は、できるだけ具体的に、「何を」「いつまでに」「どうする」という形で書き出すと実行しやすくなります。
ステップ4:実際に行動に移す
計画に従って、実際に見直しのアクションを起こします。通信会社の窓口やウェブサイトで手続きをする、不要なサービスを解約する、保険の専門家に相談してみるなどです。最初の一歩は少し面倒に感じるかもしれませんが、この行動こそが将来の大きな変化につながります。
ステップ5:見直し効果を確認し、次のステップへ
見直しを行った結果、実際に支出がどのくらい減ったかを確認します。銀行口座の引き落とし額やクレジットカード明細を見て、効果を実感することは、家計改善を続ける上での大きなモチベーションになります。
一つの固定費の見直しが完了したら、他の固定費にも同様のステップで取り組んでみましょう。そして、固定費の見直しによって生まれたゆとり資金を、次は貯蓄に回す計画を立てたり、変動費の管理方法を考えたりと、次のステップへと進んでいくことができます。
見直しの際の注意点
固定費の見直しは効果的ですが、以下の点に注意しながら進めることをお勧めします。
- 無理はしない: 極端な節約は継続が難しくなります。必要なサービスまで解約してしまい、生活の質が著しく低下してしまっては本末転倒です。ご自身の生活スタイルや価値観に合った選択をすることが重要です。
- 情報収集をしっかり行う: 特に保険や通信プランなどは複雑な場合もあります。内容をよく理解し、ご自身にとって最善の選択をするために、必要な情報収集や比較検討を丁寧に行いましょう。
まとめ
家計改善の最初のステップとして固定費を見直すことは、無理なく、かつ大きな効果を得るための有効な手段です。一度見直せばその効果が継続するため、日々の細かい努力よりも楽に支出を減らすことができ、「貯まる体質」への第一歩を踏み出すことができます。
まずはご自身の固定費を全て洗い出すことから始め、一つずつ「本当に必要か」「もっと安くできないか」と疑問を持ち、具体的な行動に移してみてください。この最初のステップを乗り越えることで、家計全体を見渡す力がつき、将来への漠然とした不安を軽減し、お金をコントロールできる自信へとつながっていくはずです。ここから、あなたの「貯まる体質」作りを無理なく進めていきましょう。